■ リップロール ボイストレーニングの方法
「ミスタープッシュ」
それは、私がアメリカにいったばかりの頃、
つけられたニックネーム。
これを訳すと「力ずくで声をだす奴」
とでもいうのでしょうか。
なぜ、そう呼ばれていたかというと前にもお話しましたが、
日本で教えられた悪い癖を引きずったままアメリカに行って
しまったからです。
1に腹筋2に腹筋、3,4がなくて5に腹式呼吸!
そんな感じでした。
お腹を使って低いときと同じ太さの声を高音まで
力でもっていく
呆れ顔のアメリカ人の仲間を横目に、パワーだけは
負けていないと自分だけ得意になっていました。
あ〜無知とはなんと恐ろしい!
思い出すだけでも、恥ずかしくて
いたたまれない気持ちになってきます。
できることなら消し去ってしまいたい
人生の汚点です。
そんな私をみかねてか、先生に与えられた
課題の1つがリップロール。
最近でこそ日本のボイトレでもかなり
メジャーなエクササイズになってきました。
しかし、このエクササイズの本来の目的を
わかっている人がどれくらいいるのでしょうか?
なんてことはない、ただ音にあわせて
唇を回転させるだけなのですが
シンプルなエクササイズだからこそ
実は奥が深かったりします。
このエクササイズの効用は多いのですが
今日はそのいくつかをご紹介しましょう。
まず、先ほどの私のよう力で押しまくる人に
とってプレッシャーを静めるのに適しています。
それなのに、力ずくで唇を回転させている人を
見かけますが、これでは火に油を注ぐだけです。
なるべく必要最小限の力で、ゆったり
惰性で回転させるようにして下さい。
そして、息、声帯、共鳴そして表情筋の
リラックス(この場合は唇とその周りの筋肉)
この4つのバランスをとることが
このエクササイズの最大の目的です。
このバランスは音程によっても変わってきます。
高い音では子音をコンパクトにする
テクニックも大切な要素のひとつです。
このテクニックについては、本筋からはずれるので
また改めて説明したいと思いますが、
力ずくで高音を出そうとすると、決して
子音をコンパクトにすることができません。
これではバランスがとれず、それどころか
大きなトラブルを招く原因になります。
話は戻って、しばらく試行錯誤の日々が続きましたが、
私がこのバランスとは何か頭でも体でもわかったとき
いつのまにか「ミスタープッシュ」という蔑称を
耳にしなくなりました。
このリップロールは、その振動によりマッサージ効果、
喉頭まわりの血流が良くなるなどの利点などもありますので、
ウォームアップやウォームダウン
にも適しているエクササイズです。
超一流ボーカリストの中にも、歌う前には
リップロールだけは絶対欠かさないという
人も結構いるのです。
一流のボーカリストがやっているのに、
なぜあなたはしないのですか?
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このリップロールのエクササイズが
収録されている、ボイトレ教材はコレ!