ボイトレ雑学 「カート・エリング インタビュー」
  今日は、先日の渡米で食事をともにさせていただいた
 一流ジャズシンガー、カート・エリングと交わした
 会話の一部をお届けします。
 皆さんからよくいただく質問を、私が代表してお聞きしました。
 プライベートなことは割愛していますので了承くださいね。
 といっても、男どうしのたわいもない話です。(笑)
 それでは、どうぞ
 ■ やすだ: 今までに誰かに歌を習ったことがありますか?
 ★ カート: 特定の1人に習ったことはないよ。
 クワイヤーに参加していたとき素晴らしいコンダクターと
 出会って指導を受けたことはあるけど、音楽学校に通ったり
 専門的な教育は受けたことはないね。
 残念ながら、よいボイストレーナーとの出会いがなかったんだ。
 ビデオやCD教材などをつかって、自分自身で試行錯誤してきたよ。
 ■ 多くの人は先生についてトレーニングを積んだり、
 エクササイズをする必要があると思うのですが?
 ★ もちろん僕もトレーニングは欠かさないよ、
 ただ自分自身でやるだけさ。
 毎日50分はウォーミングアップするね。
 ■ どんなウォーミングアップをするか教えていただけませんか?
 ★ 主にスケールエクササイズだね。
 どんな感覚か確認し、その日の調子はどうかチェックするんだ。
 ピアノがあるときはそれで練習するけど、ツアーに出ていて
 ピアノがないときはテープに録音しておいたのを使うんだ。
 ■ ツアーに出ていてハードスケジュールが続くとき、
 どうやって声の健康管理をするんですか?
 ★ 先も言ったけどウォーミングアップは欠かさずやるね。
 お酒は飲まない。もちろんタバコも吸わない。
 そして正しい発声で歌うこと。
 とても当たり前なことだけだよ。
 ■ お酒はまったく飲まないんですか?
 ★ 普段は飲むよ。仕事のとき以外はね。
 いつもは水を多く飲むことを心がけているよ。
 ■ ストイックですね?
 ★ そうさ、修行僧みたいなもんだよ。
 70歳、80歳になっても歌っていたいからね。
 ■ あなたは低音から高音までとても広い声域を持っていますよね。
 多くのシンガーは低音と高音の間にブレークがありますけど
 どうやってそれを防いでいるのですか?
 ★ それについては君の方が詳しいんじゃない?(笑)
 高音域では大きな声で歌わないこと。
 ボリュームを落とすんだ。
 ブレークを避けるために低音と高音が融けるように
 混ざり合うところを見つけるんだ。
 自分ではそれを感じられるけど、
 聴いてる人はきっと気付かないだろうね。(笑)
 ■ シンガーにとって一番大切なことはなんですか?
 ★ いつも歌っていることだよ。
 そして、よりよくなるために誰よりも練習すること。
 誰よりも歌う情熱を持つことが大切だね。
 ■ ステージで緊張したことはありますか?
 ★ もちろん!何度もね。
 ■ どうやってそれを克服したんですか?
 ★恐れというより、例えば今日レコード会社の人が
 聞きにくるとか耳打ちされたときは緊張したね。
 だって自分の人生が変わるかもしれない。
 でも学んだよ。そんなの幻想だって。
 だっていつ誰が来るかわからないもんね。
 誰か1人が特別なのではなくて、
 見に来てくれた一人ひとりが特別なんだよね。
 もしアーティストであること、そして歌に集中
 していれば誰が来ようと余計な雑念など消えていくよ。
 そうなるまで時間はかかったけどね。
 そして今の自分がいる。(笑)
 ■ 頭ではわかるけど、なかなか大変ですよね。
 ★ だから先いったでしょ?いつも歌っていろって。
 経験に勝るものはないよ。
 もちろん今の自分は簡単にそういえるけど
 だって10年以上もロードにでているからね。
 ■ 風邪を引いたときはどうやって対処してるのですか?
 ★ 容易なことじゃないね。もし風邪をひいたら、
 なるべく静かに歌うことにしているよ。
 薬を飲んで対処するのもいいけど、
 とにかくベストを尽くすこと。
 インフルエンザにかかったり
 食あたりになったことも二、三回あるよ。
 ライブの当日、足を骨折して医者に行く
 時間がなかったから、そのまま座って
 ライブをしたこともあるよ。
 それから失恋、傷心、どんなときも歌わなきゃならない。
 それがシンガーに課された務めだよ。
 でも自分自身もいたわってあげなきゃいけない。
 ■ それじゃいままでライブをキャンセルしたことはないんですか?
 ★ 2回ほどあるよ。
 そのときはかなり重い病気でキャンセルするほかなかったんだ。
 ■ 新作CDのコンセプトは何ですか?
 ★ 夕やみのロマンス、ムード。そう宵越しのストーリーなんだ。
 映画のサウンドトラックのような仕上がりにしたかったんだ。
 新しいアイディアもたくさん詰まっているよ。
 温かく、ヒーリング的な要素もね。
 それがコンセプトさ。
 ■ 今日はありがといございました。
 ★ 日本にいってみんなに会えることを楽しみにしているよ。
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 ■ いかがでしたか、一流アーティストの思考から多くを
   学んでいただけたら幸いです。
 ちょうど一昨日、リリースされたばかり、できたてほやほやの
 彼の新作、是非聴いてみて下さい。
 既に私の愛聴盤になっています。
 オススメです!
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http://www.vocal-lesson.jp/category/1173853.html
 アメリカでは、超一流ボーカリストであるカート・エリング
 のような人でも毎日練習を欠かしません。
 彼らがいまだに練習に励んでいるというのに、私たちがサボっていたら
 追いつくどころか、ますます差を広げられるだけです。
 そうならないためにも日々精進あるのみ!!
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http://www.vocal-lesson.jp/category/1173855.html