ボイストレーニング方法 Ｑ＆Ａ
■「私は５オクターブ出せるようになりますか？」
このようなご質問をいただきました。
まず「５オクターブ」の定義をはっきりさせておかなければなりません。
単にそれらしき音が出る、という場合、ここでは
５オクターブに含めないこととします。
しっかりピアノやキーボードで測定できるものを前提とします。
そうすると、お答えは
「だせるようになるかもしれないし、だせるようにならないかもしれない。」
以上。
な〜んだ。とがっかりしましたか？
でも、これが私の誠意あるお答えです。
だって、私は預言者や超能力者でもないし、
いきなりそんなこと質問されても即答できません。
もし、だれでも5オクターブだせるようになる
という人がいるとすれば、それは神か詐欺師です。
私は神でもないし、詐欺師にもなりたくないので、
やってみなきゃわからない。
としか言いようがありません。
練習すれば、だれでも5オクターブだせるようになるかといえば、
残念ながらそうとはいいきれません。
ただこれだけは、断言できます。
もしあなたにその素質があって、方法論さえ間違えないで訓練に励むのなら
たとえ今、２オクターブしかなくても、5オクターブ出せるようになると。
喉に先天的な欠陥がないかぎり、誰でも３オクターブを身につける能力は
生まれつき持っています。
でもそこから先は、神様からの賜りものです。
そして、その神様から与えられた原石を磨いていく方法を間違えないことです。
でも、そもそも、この質問自体ナンセンスなことに気づいて下さい。
下のような言葉に言い換えれば、この質問の無意味さがわかると思います。
もしあなたが、陸上競技の選手だったら
「私は１００メートルを９秒台で走れるようになりますか？」
と初対面のコーチに質問するでしょうか？
もしあなたが、野球の選手だったら
「私はホームラン５０本打てますか？」
といきなりコーチに尋ねるでしょうか？
たぶん「そんなこと言ってる暇があったら練習しろ！」
と怒鳴られるのがおちです。
私は体育会系の人間ではないので、
そんなことは怖くて言えないのですが（笑）
振り返ってみれば、昔、私も似たような質問をしていたな〜
誰でも最初は不安なんですよね。
だから、気持ちはわかりますし、入門者に
厳しいことをいうつもりはありません。
でも、そういう質問をしなくなったとき、声域のことだけでなく
多くの問題がクリアできるように思います。
やることをやっていれば、不安から自信に変わっていきます。
そして、自分ができること、できないことがわかってきます。
やればなんでもできる。
願えばなんでも叶う。
私はこういった軽薄なプラス思考には懐疑的です。
「変えられることは変える勇気と、変えられないことは受け入れる寛容な心を持つ。」
それが賢い人間のありかたです。
だから、たとえ５オクターブ出せなくても悲観する必要はまったくありません。
出せる人は、ラッキーと思って、さらにその武器を磨いて下さい。
なんでもかんでも全てできる人など、この世の中に存在しません。
あなたが尊敬するボーカリストも自分の強みを見せているに過ぎません。
だから、あなたも自分の強みを見つけ、磨いていくのです。
勝負できる土俵がわかったとき、初めてあなたの個性が輝きだします。
そのような質問をする前に、できることから１つずつ確実につぶしていきましょう！
